過労による聴覚障害

2週間ほど聴覚を失っていましたが、原因は過労・睡眠不足・ストレス。
朝起きた瞬間、水中にいるような、あるいは耳に膜が張ったような感覚があり、音が聞こえなくなっていました。
働き盛り世代に多いそうで、若い時と同じような仕事の仕方では最早身体がついてきません。
聴覚を失うくらいなら何とかなるだろうと考えていたのですが、予想以上に大変だったので今回はその記録です。
アクセシビリティ情報の収集へ

関係各所にチャット等で打ち合わせ延期などをお願いしていたところ、1社から「アクセシビリティ情報を収集してほしい」というお話がありました。
アクセシビリティ:
障碍者が他の人と同じように物理的環境、輸送機関、情報通信及びその他の施設・サービスを利用できること
これまで視覚障碍者様向けの対応は行ってきましたが、聴覚障碍に関しては全くの未経験であったため、これを了承。
普段通りの生活を行い、データを収集することとしました。
即日、自転車に轢かれる

耳が聞こえない場合、電話が鳴ってもどうしようもないことが判明。
たまっていく留守番電話を尻目に、情報収集がてら食事をとりに向かいます。
普段通り、メールの返信をしながら歩いていたのですが、後ろから来た自転車に轢かれました。
一礼して走り去っていく自転車を眺めながら、歩道を自転車が走ってはいけない理由、ながらスマホの危険性を再認識。
視覚障碍者と違い、白杖などで識別することもできないため、周囲の配慮は期待できません。
タスキをかけるわけにもいきませんので、至る所でスマホのメモ帳に書いた「耳が聞こえません」を提示して過ごしました。
社会は健常者向けにデザインされている

足を骨折し、松葉杖で生活した方なら理解しやすいと存じます。
スロープがないエントランス、エレベータのない施設、屈まないと取り出せない自動販売機。
基本的に全てのデザインは多数派の利用を想定されており、そこに障碍者は含まれていません。
一方、GoogleはWebサイトの評価基準に視覚障碍者向けアクセシビリティを含んでおり、Web業界においてはアクセシビリティの浸透が見られています。
聴覚に至っても健常者向けがスタンダードであり、たとえば防災放送は聞こえませんし、近場の火災報知器の音も聞こえません。
実際、Jアラートのテスト放送や、8月9日の黙祷も聞こえませんでした。
津波の警報が鳴っても逃げられないと感じたものです。
聴覚がないと不便なサービス

頻度が高いものとしては、電話の不便さを毎日実感。
逆に会話の頻度を低下させるもの、例えば食券機やSNS、チャット機能には助けられました。
またYoutubeの文字起こし機能も大変重宝し、ニュース番組等はYoutubeの公式チャンネルにて閲覧しておりました。
自転車のベル・クラクション | 危険を知らせるために取り付けが義務付けられていますが、耳が聞こえなければ危険を知る由もないです。 救急車、消防車のサイレンも同様です。 |
目覚まし時計 | 解決策が見つからなかったものが目覚まし時計。 バイブレーション機能で目が覚めることもなく、自力で起きるしかありませんでした。 |
呼び鈴・ドアホン | 機材などを郵送で取り寄せているのですが、呼び鈴が鳴ったことに気付けません。 宅配ボックスは革新的なサービスであったと感じます。 |
町内放送・報知器 | 全く聞こえないので防災関連のアクセシビリティ化は急務かと。 火災報知器には表示灯がありますが、そもそも見に行かないとわかりません。 |
電話予約 | 病院等では電話予約が多いのですが、電話をかけられませんでした。 直訪するものなのでしょうが、コロナ禍では難しいです。 Web予約ありの医院に通院しましたが、病院にとってWebサービスの充実は強く求められているのだと思います。 しかしながら、忙しすぎてそこまで手が回らないのだと容易に推測できます。 |
留守番電話 | 電話はグラハムベルの偉大な発明ですが、聴覚がなければ使用できません。 グラハムベルが音の研究に没頭した経緯として、母親の聴覚障碍があったそうですが、聴覚障碍者でも聞こえる音の完全なる解決には至っていないようです。 留守番電話をテキスト化できれば効果的なサービスになりそうです。 |
接客サービス | 当然ですが、健常者向けの接客が一般的です。 マスクがあるため口の動きから会話を予想することもできず、「レジ袋いりますか?駐車券ありますか?」は読み取り難易度の高い質問でした。 手話のできる方もいらっしゃったのですが、こちらが手話をできず、勉強不足が露呈しました。 最終的にはスマホの音声入力でテキスト化し、意思疎通を図り、解決に至っています。 業務中のスマホ所持を禁止している職場もあるそうですが、不測の事態にどう対処するのでしょうか。 |
洗濯機 | 洗濯が終わると音で知らせてくれるのですが、これも困ったものでした。 洗濯終了に気付かず、シャツはしわくちゃに… 干した後に雨が降ってきても、音では気づけません。 他にも炊飯器や電気ケトル、お風呂の自動お湯張り機能など家電系のほぼ全てが困難なもの。 いかに耳に頼って生活しているのか実感できます。 |
感覚マーケティング

2030年にはインターネットが五感に繋がるとされ、Web3.0へ向けて大きくインターネット業界は動いています。
Web業界においても影響は大きく、Webサイトは新たな時代へと突入しました。
中央集権からの脱却、メタバース上でのサイト表示、知覚に訴えかけるデザイン。
どれも既存手法からの脱却を伴うものであり実例に乏しいのですが、五感を活用する「感覚マーケティング」は有効性が示されています。
知覚 | 感覚から入力された情報が脳に到達、大脳皮質に送られ、特定の音や形状として解釈されることを知覚と呼称する、 「入ってきた情報=感覚」「処理された情報=知覚」と定義付けられるが、感覚と知覚には不一致が生じる。 この不一致をバイアスと呼び、文化、年齢層、性別などにより異なる反応を見せる。 タコを見て美味しそうと感じるか、不気味と感じるかは食文化の影響によるバイアスである。 |
視覚 | デザインとは視覚マーケティングそのものである。 色、形、大小、強弱、明暗といった要素を掛け合わせ、直観を制作する。 丸いものへの庇護欲といった生物的本能もまた視覚要素の1つとなる。 |
聴覚 | 音は音波による感覚と定義付けられ、「音の大きさ=振幅」「音の高低=周波数」「音色=倍音」の3つによって知覚される。 周波数は人間が知覚できる範囲に上限があり、身近な例がモスキート音である。 音を用いたマーケティングでは高低、音色、大きさを考慮した上で、サウンドロゴやスローガンを制作する。 |
嗅覚 | 嗅覚レセプターより嗅覚皮質へ送られ知覚される。 匂いの知覚は社会共通認識、友人関係、家族、文化などの後天的要因によって強く影響を受けて形成されている。 ラベンダーの香りを花畑として知覚するか、トイレの消臭剤として認識するかは生活環境の影響による形成である。 よって匂いの知覚は、消費者の感情や経験が強く影響を及ぼす、難易度の高いマーケティングとなる。 |
触覚 | マーケティングでは接触感覚を用いる。「情報を得るための接触=情報的接触」「接触自体が目的の接触=快楽的接触」の2種が存在する。 赤子が触って確かめるのは情報的接触の最たる例であり、衣類などの柔らかさを求める接触は快楽的接触に該当する。 一般的に接触欲求が高い人は、快楽的接触を求める傾向が強くなる。 |
味覚 | ユダヤ教では、「①女性」「②口」を対象としたマーケティングが前提となる。 ①女性は家庭を守ることが多く、男性の財産を扱う金庫としての意味合いがある。 ②口は食べ物を表し、毎日必要となる消費サイクルの短い資金源としての意味合いである。 日本マクドナルドの創設者、藤田田さんは、ユダヤの教えを忠実に守り、数多くのマーケティングを成功させてきた。 目的は日本人の白人化。日本ユダヤ教会は渋谷にある。 |
障碍者はWeb3.0を体感できない?

感覚マーケティングにおいて、障碍者向けの記述は見当たりません。
しかし、障碍者向けのサービスはすでに感覚マーケティングが取り入れられています。
例えば、視覚障碍者向けのアートが存在しますが、様々な質感のテクスチャを利用することで、触ってアートを楽しむことができます。
また、触れる絵本もあり、触って挿絵を理解し、点字で情報を識別できます。
五感がインターネットに接続されたとき、失った感覚を再現できるかは未知数です。
しかし、出歩くことが難しい方々にとって、多くの救いとなり社会的課題の解決に至る時代の変革です。
総務省が力を入れるのも頷けます。
予期せぬコロナ禍・ウクライナ戦争の影響

私は全く知らなかったのですが、補聴器はアナログ機器からデジタル機器へと進化しており、スマートフォンとの連動性も兼ね備えています。
今回、完治しなかった時に備え補聴器を手に入れようとしていたのですが、デジタル機器である以上半導体は必需品です。
諸々の事情が相まって、半導体は2020年秋ごろより不足。
それ故に、補聴器も手に入りませんでした。
日本政府は半導体産業戦略を押し出し、予算案を可決しています。
2022年には不足状態も改善に向かうと、世界的大手半導体メーカーも発表しております。
もう8月ですが…
ちなみに耳が聞こえるようになって一番最初に感じたのは、今年のセミは声が大きいでした。