打ち合わせのデザイン

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打ち合わせって何をするの?

デザイナーにとって「打ち合わせ」とは、仕事のクオリティを10倍あげる時間です。

そもそもデザインの大前提は「顧客の要望を叶える道具」であること。

つまり顧客の要望を正確に把握しなければなりません。

家電量販店の店員さんをイメージしてみましょう。

高齢の男性が来店され、「パソコンが欲しい」と相談されました。

皆様はいきなりMacBookを売りつけますでしょうか?

「用途」「予算」「環境」といった具体的事象を聞き出し、顧客の生活スタイルに違和感なく溶け込む「商品」をイメージして提案されると思います。

打ち合わせはこのイメージを擦り合わせる時間です。

顧客もいきなりMacBookを買わされるよりも、使用イメージが掴みやすく満足度が向上するでしょう。

さらには店員に相談すればなんでも解決するイメージを植え付けられます。

打ち合わせには何が必要?

筆記用具やパソコンならびに名刺といった必需品は当然必要ですが、忘れてはいけないのが「イメージ」と「質問」です。

打ち合わせに至る手前の段階には、顧客からの「問い合わせ」があったハズです。

問い合わせ打ち合わせ正式受注(制作開始)

問い合わせの段階で、顧客から何をして欲しいかある程度聞いていることでしょう。

家電量販店の例であれば、「パソコンが欲しい」と相談された状態が「問い合わせ」にあたります。

デザイナーの質問

普段デザイナーは打ち合わせで何を聞いているのか、先に具体例を見てみましょう。

メモや議事録を取りながらの質問がベストです、要件定義書を作成する際に読み返しますので。

デザイン種別質問内容例
共通の質問・なぜ当社にご依頼を?
・〇〇(名刺やチラシ)の目的はどのようなものでしょう?
・競合他社はいらっしゃいますか?
・競合他社との明確な違いやセールスポイントは何でしょう?
・貴社の弱みはございますか?
・期待する効果は何でしょう?
・商圏範囲はどの程度でしょう?
・こだわりたいポイントはございますか?
・〇〇(名刺やチラシ)のご依頼ははじめてですか?
・企業理念はございますか?
・コーポレートカラーはありますか?
・どんなイメージを与えたいですか?
・予算はどれくらいを想定されていますか?
・いつまでに欲しいでしょうか?
・近しいイメージはありますか?
・素材はご用意いただけますか?
・今後さらに改良の予定などありますか?
・どのような形式で納品いたしましょうか?
・書類や契約は何が必要ですか?
名刺デザイン・受付などに配置しますか?
・白黒印刷でコストを浮かせたいなどありますか?
・紙の種類にご希望はございますか?
・両面使用しますか?
・配る相手は高齢者が多いですか?女性が多いですか?
・外国の方にも配りますか?
・問い合わせ用のメールアドレス、電話番号はありますか?
・WEBサイトなどのQRコードいれますか?
・ロゴ素材などはございますか?
・印刷してお渡しでよろしいですか?データ入稿の方がよろしいでしょうか?
ロゴデザイン・使用用途はどんな場面を想定されていますか?
・正方形、横長など2種制作したほうがよいですか?
・印刷する際は2色刷りですか、白黒ですか?
・(変更の場合)どのような意図で変更されたいのですか?
・アイコン的なロゴにしますか?ワンポイントに抑えますか?
・ロゴを拝見される顧客は、どのような世代が多いでしょう?
チラシデザイン・配布形態はどのようなものでしょう?
・配布エリアはどの程度を想定されていますか?
・市役所や病院などの公共施設に配置しますか?
・どのような方にご覧いただきたいですか?
・印刷はフルカラーにいたしますか?
・紙の種類にご希望はございますか?
・両面使用しますか?
・印刷サイズはA4にいたしますか?
・折りも必要ですか?
・地図などもいれますか?
・文言ひな型作成のご協力いただけますでしょうか?
・ロゴ素材などはございますか?
・写真素材はありますか?
・印刷してお渡しでよろしいですか?データ入稿の方がよろしいでしょうか?
WEBデザイン・サーバーはございますか?
・運用管理などはご自身で行いますか?
・(運用される場合)簡易的なマニュアルのお渡し、もしくは操作指導が必要ですか?
・1日当たりどれくらいの人数が閲覧されるか予測はございますか?
・SNSなど運用されていますか?
・GoogleMAPに登録されていますか?
・アナリティクス登録などはご自身でされますか?
・お問い合わせ用のメールはございますか?
・お問い合わせ用の電話番号はございますか?
・どのような機能が欲しいでしょうか?
・ページ数はどの程度を想定されているでしょうか?
・閲覧される方はどのような方を想定されていますか?
・顧客のコア世代や性別などの情報はございますか?
・文言ひな型作成のご協力いただけますでしょうか?
・ロゴ素材などはございますか?
・写真素材はありますか?
・サーバーにアップ致しますか?データ納品の方がよろしいでしょうか?

文字がいっぱいで見辛いかもしれませんが、抑えておきたい質問事項は上記例の通りです。

他にも顧客特性に合わせた質問などが入りますので、喉がカラッカラに乾きます。

これらの質問は、顧客の目的と意図、ライフスタイルを把握し、必要な作業を明確化するためのもの。

デザインが顧客から遠い存在にならないよう、生活(業務)の延長線上にあるデザインをイメージします。

とはいっても、なかなかイメージが付かないと思いますので、冒頭の家電量販店に置き換えてみましょう。

質問のジャンル質問内容例
経験・パソコンを購入されるのは初めてですか?
・パソコンの使用経験はありますか?
・(購入されていた場合)メーカーはどちらでしょう?
・(購入されていた場合)使用歴はどれくらいでしょう?
・(はじめての場合)サポートなど必要そうでしょうか?
・設置やネット接続はご自身でできそうですか?
ライフスタイル・自室で使いますか?それとも持ち歩きますか?
・ご趣味などで使う予定はございますか?
・ご家族と兼用されますか?
・お子様の学業でも使いますか?
・ペットはいらっしゃいますか?
・動画の撮影や写真整理されますか?
・仕事で使いますでしょうか?
・毎日パソコンを使いますか?
・大量のデータを扱いますでしょうか?
・動画を見たりしますか?
・CDやDVDなど使用されますか?
・パソコンでメールを使いますか?
・ZOOMなどのオンライン通話を使いますか?
・LINEなどSNSをされていますか?
・ゲームなどされますか?
・(ゲームする場合)どのようなゲームがお好きでしょうか?
・予算はどれくらいでしょう?
目的・パソコンで何をしたいですか?
・価格、性能など、こだわりたいポイントはございますか?
・(買い替えの場合)買い替える理由は何でしょう?
・好きなメーカー(国産が良い)などありますか?
・すぐに欲しいですか?

なんのための質問をしているのか、なんとなく見えてきたでしょうか?

顧客にピッタリの商品を探し当てる為に、調査分析を行っているのですね。

大切なのはライブ感です。

その場で思いついたアイディアは大抵良いものですので、どんどん共有しましょう。

質問からの提案

家電量販店例の続きですが、質問によって的が絞られてきたら、皆様は提案したい「実物のパソコン」まで案内すると思います。

口頭だけでパソコンの全てを説明することができませんし、お客様に具体的なイメージを持たせることはできません。

実物に触らせるのが最も安全で、間違いがないものです。

売り切れてしまって実物がなければ、カタログなどを持ち出すことも多々あるでしょう。

打ち合わせで行うべきイメージの擦り合わせとは、上記家電量販店例のような相手を慮(おもんぱか)る行動です。

つまりイメージを持ち込み、共有し、自分の分析と齟齬が無いかを確認しています。

持ち込むべきイメージ

写真を1枚渡されて「これがオススメですよ」と言われても、「ハイ買います」とはならないでしょう。

デザインも全く同じで、全てお任せしますという段階に至るまでは、膨大な実績と経験が必須です。

イメージを持ち込む意図は、「顧客との認識のズレを正す」「共通のゴールを定める」「作業量のスケールを掴む」「顧客に比較分析させる」「必要な物を洗い出す」といった制作に直結する要素のフィックスです。

そのため、打ち合わせに持ち込むイメージは写真に限ったものではありません。

「写真」「動画」「WEBサイト」「効果測定値」「クチコミ」「競合他社の情報」など、イメージは多岐に渡ります。

無論、これら全てを確認させるのは忍びないので、デザイナーは最低限必要なモノを3点ほどスポイルして持ち込んでいます。

5分後にイメージを具現化させる

打ち合わせが終わったら、5分後には作業に移れるようにします。

物理的に無理と思われるかもしれませんが、頭の中でスケジュールを組んだり、構成を考えられるハズです。

要は「5分後に作業に移れないなら、打ち合わせが不十分」であると言えます。

自分が何をすれば良いか把握できていなければ、いつまで経っても完成しません。

部下やチームメンバーが理解できているかも、打ち合わせの中で確認しておきましょう。

「5分後作業に移る」ためには、できるかどうかの状況判断も大切です。

できないと思ったら打ち合わせの中で代案を出し、相手の了承を得ましょうね。

打ち合わせの〆

「〇〇日後までに要件定義書をご提出致します」など具体的にスケジュールを切ります。

「チェックバッグいただいた後修正を挟み、〇月〇日にはデザインラフ提出を行います。本制作に移るまでには素材提供いただけると幸いです。」など、双方のスケジュールをあらためて確認することで、共に制作していく協業状態に持ち込むことが可能です。

顧客とデザイナー、どちらの熱量も同程度に温めておくことが、持続的で実現可能なデザインには必要不可欠です。

デザインの前提は「顧客の要望を叶える」こと。

それを念頭に置いて打ち合わせに臨んでください。

要件定義ってなに?

大手様相手だと打ち合わせ後に、先方から「要件定義書ください」と言われるものです。

この際にRFP(提案依頼書)をくれる企業は超優良企業ですね、役所様や公共団体様は大抵くれます。

言われなくても提出したほうが安心なのが、要件定義書という書類。

「具体的に何を作るのか」「なんのためのWEBサイト(ロゴ/イラスト)か」「どんな機能を盛り込むのか」「予算はいくらか」「納期はいつか」「運用はどうするか」など打ち合わせで決まった内容を書き出し、双方確認することで齟齬が無いかを証明し合います。

後から「言った言わない」となりがちな認識のズレを事前に防止するための1工程です。

確認事項要件定義に記載する内容例
何をつくるのか「TOP」「お問い合わせ」「企業情報」「〇〇」「〇〇」からなる、計5PのWEBサイト。
全て大見出し(グローバルメニュー)となり、TOP以外はTOPからの下層ページとなる。
PCおよびスマートフォン(iPhone/Android)での閲覧に適したものとし、ブラウザはSafari、IE、Edge、Chrome、FireFox、Operaでの閲覧を想定する。
目的は何か名刺代わりのWEBサイトであるが、最大の目的は商圏範囲内の顧客取り込み。
閲覧数ならびに問い合わせ行動の割合向上を狙う。
必要な機能は何かお問い合わせ機能の実装がマスト。
他簡易的なSEO対策ならびにSNS連動機能を付与する。
サーバーは契約済のレンタルサーバーを使用し、問い合わせ先メールアドレスは後日ご提供いただく予定。
またTOPには事業内容をイメージしやすいカルーセル型の画像ギャラリーを設置。
必要な素材は何か経営理念ならびに企業プロフィール、事業説明、商品詳細情報文章のご提供をお願い申し上げます。
また、写真や動画、ロゴ、FTPアドレス、アナリティクスIDは貴社よりご提供いただいた物を使用させて頂きます。
予算はいくらか〇〇万円以内での制作をご希望とのことでしたので、添付の見積もり書をご確認ください。
レンタルサーバー維持費、撮影費、ロゴ制作費は含まず、追加発注があった場合は別途見積もり書を提出。
納期はいつか〇〇年〇〇月より新事業として立ち上げ予定であるため、操作説明の時間(1回2h×3)を考慮し、2か月前の〇〇月〇〇日を最終納品日とする。
以降の運用に関しては、打ち合わせの通り貴社サイドで行っていただくようお願い申し上げます。
納品形式貴社側でサーバーにアップくださるとのことで、WEBサイトの製作データ一式をZIP形式で納品いたします。
提出媒体はUSB保存の物理的媒体ならびにメールでの電磁的媒体となります。
その他お支払いは請求書到着の後、貴社の経理日にあわせた銀行振込でお願い申し上げます。
別途NDA契約を結びますので、〇〇月〇〇日にご訪問させていただきます。
その際、印鑑をご準備いただけますと幸いです。
※修正回数は〇〇回まで無料です。
(修正回数についてはクラウドソージング経由で契約する際に明記することが多いです)

打ち合わせで役立つ行動心理学

行動心理学、社会心理学はデザイナーが覚えておかなければ損をしてしまう学問です。

マーケティングやLP(ランディングページ)またはチラシなどにも心理学を利用するデザイナーは多く、望む方向へとユーザーの行動を操作しています。

今回は打ち合わせで知っておくと便利な、行動心理学を9個ご紹介します。

気を付けていただきたいのは、相手がデザイナーや経営者、営業マンの場合は心理学を習っています。

そのため、展開を操作するためにワザと行動を起こす場合もありますので注意です。

視線が動く目線に考えの方向性が表れます。
・相手の視線が左上に上がる「視覚的な未来の想像」
・相手の視線が右上に上がる「視覚的な過去の想像」
・左水平へと視線がスライド「聴覚的な未来の想像」
・右水平へと視線がスライド「聴覚的な過去の想像」
・左下へと視線が下がる「体の感覚に集中」
・右下へと視線が下がる「心の中での会話」
足を組むクセになっている人もいるのですが…
自分に自信がなく、相手を拒否している心理状態。
不安感が強い方などに多くみられる仕草です。
腕を組む物理的距離を取ろうとする心理で、自己防衛の表れ。
相手に不安感を抱き、拒否感を感じています。
手先が冷えた時に温めたくて腕を組む方もいます。
背もたれによりかかるこちらも物理的距離を取る自己防衛。
どのタイミングで動いたかを思い出し、安心させてあげると良いでしょう。
直前の話題の中に、不安を感じる要素があったことを示します。
足を広げる高齢の男性に多い印象があります。
偉ぶりたい、強い自分をアピールしたいという自己表現の一種。
動物の威嚇行動と同じ原理です。
鼻に触る欲求や本音を隠したいときに表れる仕草。
女性を前にした男性が鼻に触れるのは性的欲求を感じています。
ただ、相手に鼻毛出てるよと伝えたい場面もあったりします。
マスクをつけている際はズレを直している状況も多いです。
耳に触れる退屈や無関心を示します。
もう聞きたくない、話が長いなどを表す心理状態です。
手を隠す心を開いていない状態を表します。
机の下やポケットの中、拳を握っている状態は、興味がないことを示す状況。
打ち合わせでは少なくとも手をテーブルに上に置きましょう。
相手も心理学を知っていることが多いですので。
瞳孔が開く興味をもっている状態を表します。
提案内容が刺さったプレゼンは、全員の瞳孔が開く瞬間を空気から感じ取れます。
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